会計管理モジュール①
会計モジュールの全体構造
会計モジュールは大きく分けて、FI(財務管理)とCO(管理会計)の2種類で構成されている。
FIとCOは他のモジュールで実施された処理に基づいて、会計に関する情報がリアルタイムで反映される。
FI(財務会計)モジュールの概要
FI(Financial Accounting:財務会計)モジュールは、制度会計(外部報告用)として決算書の作成
それに必要な情報の登録、処理を行います。
FIモジュールには、各モジュールから仕訳の形でデータが連携される。例えばMM(在庫/販売管理)モジュールから
からは購買発注取引によって発生する在庫計上や経費、買掛金などの情報、在庫の動きに伴う在庫の増減や費用
計上などの金額情報が連携される。
SD(販売管理)モジュールからは受注取引により発生する、在庫払出しや売上原価の計上、売掛金や売上などの
金額情報が連携される。
CO(管理会計)モジュールの概要
CO(Controlling:管理会計)モジュールは、内部の業績管理用として、部門やプロジェクトなどの企業内の管理
単位に基づく費用や利益の管理、予算との対比などを行う。
COは各モジュールから、取引時に発生した収益、費用などのデータが管理に必要な情報を含めて連携される。
例えばMMからは発注取引により発生する在庫の受け入れ、外注費、経費などの情報が連携される。
SDからは、受注取引により発生する、出荷時の売上原価および収益計上時の売上などの情報が連携される。
FI-GL(総勘定元帳)モジュール
FI-GL(総勘定元帳)モジュールの概要
FI-GLモジュールは日々の取引を仕訳として登録し勘定ベースで管理を行います。
決算を行うための月次処理、年次処理もFI-GLと分類するのが一般的。
FI-GLモジュールの処理は主に以下の3つに分類される。
◆日時処理
日々発生する取引の元帳への記帳、勘定別の残高管理。
◆月次処理
月次決算を行い、残高を確定する月次調整処理(外貨評価など)や決算帳票の出力。
◆年次処理
企業の決算を行うのに必要な決算調整仕訳の入力や決算帳票の出力、対象の会計年度を
締めて、翌年度に残高の繰り越し、翌年度の期首残高を作成する残高繰り越し処理。
振替伝票登録、承認
振替伝票登録は、日々発生する取引を仕訳として登録します。MM、SDと連動する仕訳については
自動で計上されるため、登録は不要となる。債権・債務、固定資産を計上する場合はFI-AP(債務管理)
FI-AR(債権管理)、FI-AA(固定資産管理)での計上となるためFI-GLではその他の振替伝票の登録を
行う。
振替伝票登録には、伝票を一度末転記(元帳に記帳されない)で登録し、承認を行うことで元帳に
記帳される末転記元帳登録と、登録時に元帳に記帳される転記伝票登録がある。
SAPの入力画面ではトランザクションコードを指定する。
トランザクションコード
→プログラムを起動する時に使用するコードのこと
主なトランザクションコードは以下の通り
機能 Tr-cd 説明
・末転記伝票入力(Enjoy) FV50 末転記状態で伝票登録を行う
・末転記伝票変更 FBV2 末転記伝票を変更する
・会計伝票登録 FB01 直接転記の伝票を登録する
伝票登録、承認の利用方法
会計伝票の起票には、不正の防止や内部統制の観点から承認を行う必要がある。
SAPでの承認はいくつか種類がある。
◆システムによる承認(末転記伝票)
記帳担当者が末転記伝票の登録を行い、上長が承認(転記)を行うことで元帳に記帳される。
◆システム承認なし(事後承認)
記帳担当者が伝票登録を行うことで元帳に記帳される。その後上長は伝票内容を印刷した紙
に押印し承認する。一度記帳した伝票は原則変更や削除できないので、不備があった場合、
反対仕訳で取り消しを行う。
◆システム承認により転記(ワークフロー)
SAPでは承認が必要なプロセスに対して「ワークフロー」という機能を利用できる。
これを利用して「伝票入力→承認者への連絡→承認」という流れで承認する。
伝票の末転記伝票登録可否
SAPでは末転記伝票を利用するケースが多いが、末転記伝票登録ができないケースがある。
その場合、会計伝票は直接転記となり、承認は事後で行う形になる。
末転記で登録できないケースは以下のようなケースがある。
①他モジュールから自動仕訳で計上される伝票(一部例外あり)
②売掛金や買掛金などの末消込明細の消込を伴う伝票
③特殊仕訳(手形、前払金)
月次処理
SAPの決算処理の考え方は1年間を決算期とし、年度を「会計年度」、月を「会計期間」と
して表すのが一般的。会計期間毎に定期的な取引の登録や、期末にその時点での再評価が
必要な科目について調整を行う機能が用意されている。これらの機能いより、月次での
決算帳票の作成が可能。
セグメント別の賃借対照表/損益計算書の作成
SAPでは、法人の単位を会社コードとして定義するのが一般的であり、会社コード単位での
賃借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を作成できる。
企業によっては法人単位以外にも事業別、拠点別の賃借対照表や損益計算書を作成すること
がある。その際、SAPでは「事業領域」「利益センタ」「セグメント」といったコードを使っ
て、それぞれの単位で作成できる。
事業領域や利益センタはFIやCOにおける管理単位として使用されてきたが、他のモジュール
との紐づきが強く、変更が用意ではないため、NewFI-GLモジュールでは、FI-GLモジュール内
のみで設定できる単位として「セグメント」が使用可能になった。
どちらであっても財務諸表の作成は可能ですが、ほかのモジュールとの関連性を求めるか
決算書および残高管理を行いやすくするかによって、使用するコードを切り分ける。
年次処理
SAPでは、月次決算の積み重ねが年次決算になるとの考え方から、年次決算で実施できる処理
は、基本的には月次処理と同じ。
年次決算特有の処理として、「残高繰越」がある。また、月次処理であげた機能についても
毎月必ず行うのではなく、四半期/半期/年次で実行することが可能。